貴方も私もクリスマス





 事の発端は、銀髪の少年の発言だった。

「最近、クリスマスという言葉を耳にするんですが、どういう意味なんでしょうか?」
「あぁ、それよく聞くよなー」
「何かを奉る、宗教系の行事なのか?」

 不思議そうに尋ねてきたシェラに、レティシアとヴァンツァーもそれに便乗する。
 部屋には老若男女さまざまな人間(?)が集まっているが、説明に適していて、かつ一般常識に詳しい者はほんの一握りしかいない。ファロット一族は最も適している人物を検索し、その顔をじっと見つめた。
 のんびり茶を飲んでいる、現役女子高生だ。

「えーと、クリスマスってのは、お祭りのことだね」
「祭り、ですか……?」
「最近はカップルの聖典とか、馬鹿騒ぎの対象だけど、昔はもっと違う意味があったよ」
「どんな意味だ?」

 真剣な顔で尋ねてくる、何も知らない彼ら。
 ある意味汚されていない純粋な感性たちに、悪戯心がむくむくと沸いてくる。
 浮かびそうになる笑いを必死に押し殺して、思考を総動員して話を組み立てながら、日本人独特のお愛想笑いを振りまいた。


「昔々、遡ること西暦千年頃に、サンタクロースという魔法使いがいてね」


 ぶっとケリーが紅茶を吹いた。
 ジャスミンが手作りクッキーを握りつぶす。
 ちょっと待て、と訴えてくる視線や、居心地の悪そうなルウを無視して、もっともらしく穏やかに話を続けていく。

「そりに乗れば一晩で惑星を周り、背負った袋からは何でも召還できる、それはそれはすごい魔法使いでした」
「そりゃすげえ」
「こちらの人間にも、魔法の使い手がいたのだな」
「けれどサンタクロースには、困った癖がありました。――可愛い子供たちが大好きで、毎年十二月二十四日になると世界中を飛び回って、子供を攫っては城に連れていってしまうのです」
「……癖の問題ですか?」

 さあ、脱線してきたぞ。
 何故か止められない雰囲気に、一同は揃って背筋をただす。いかにもな語り口調に、周囲が真剣に、一部戦々恐々と見守っている。

「サンタクロースにも良心があったのか、子供の代わりに金銀財宝を置いていきます。けれど親は宝より、子供を捕られてなるものか、と口々に訴えます」
「そうでしょうね……」
「考えた大人たちは、子供の身代りを作ることにしました。十二月二十四日の夜、子供たちは森に隠しておいて、代わりに靴下に綿を詰めて帽子を被せた人形を、ベッドに寝かせておきました」


「――するとサンタクロースは見事に騙されて、翌朝には、靴下の代わりに宝の山があったのです。子供が攫われず、宝まで手に入った、と喜んだ人々がお祭りを開いたのが始まりです」


 ちゃんちゃん。
 最後もしっかりシメた語り手に、納得した顔で頷いているシェラやヴァンツァー、レティシア。
 そして、現代組もまた唖然とした顔で子供たちを眺めていた。

「すごいなぁ。三人とも本気で信じちゃってるよ」
「……見事な虚言だな。聞いているこちらも騙されそうだ」
「止めなくていいのかよ、金色狼」
「面白いから黙っていよう」

 真実に気づいた彼らが張本人が追いかけ回すのは、聖夜の二日前のことである。





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