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「ところで、十月三十一日は暇か?」

 突然切り出された言葉に、子供たちはきょとんと目を開いた。
 本日は、中等部から大学部までの休日が重なった珍しい一日。
 クーア夫妻の幾つかある別荘の一つに集まり、朝から誰かが持ち込んだトランプを――ババヌキに始まり、神経衰弱・ブラックジャック・七並べ・ポーカー・大貧民・ダウト・ぶたの尻尾と常識なものからローカルなものまで――ぶっ続けで遊んでいた真っ最中であった。

「その日がどうかしたのか、ジャスミン?」
「ああ。実はジンジャーからパーティーの招待状が送られてきたんだ。折角だから一緒にどうかと思ってな」
「……いいのキング? 奥さんとデートなんじゃ……」
「ジンジャー主催のパーティーでか? 冗談だろ」

 肩をすくめたケリーから回ってきた、純白の紙に金の装飾といういかにも豪華な招待状を、白熱しすぎたジジヌキにそろそろ飽きてきた子供たちが次々に覗き込んでいく。

「豪華そうな集まりなんだな」
「これは、仮面舞踏会なのでしょうか?」
「というより仮装パーティーじゃないかな。ハロウィン当日だし」
「「「ハロウィン?」」」

 常識に疎いファロット一族が、そろって首を傾げた。
 普段ならここで盛大におちょくるであろう人間が約一名いるのだが、今回はあっさりと答えてみせた。

「カボチャに穴開けて、お化けの格好をするお祭り」
「どんなだよ」
「うーん、うちの実家じゃマイナーだったから、私もよくは知らないんだよね」
「……この前にイースターについて尋ねたら、『……卵?』としか返ってきませんでしたよね」

 相変わらず偏った知識を披露してくれるに、現在進行形で犠牲者となることが多い異世界出身者たちはため息をついた。

「まあ、こういった催しは知り合いが多くいる方が楽しいだろう? 夫と二人きりのデートはこの間楽しませてもらったことだしな」
「そういうこった。というわけで、行きたい奴は――」
「俺は行こう」

 すぱんっと手を上げた人物に、誰もが一瞬目を疑った。
 基本的に引きこもりの感があるヴァンツァーが自ら立候補するというその光景に、リィお手製の菓子でも食べたんじゃないかと本気でシェラが引いているほどだ。

「……どうしたんだ、黒すけのやつ」
「ほら、その日はログ・セール大陸の高等部合同でもパーティーがあるから」
「学生の社交性を高めるとかで、他に先約でもある奴ら以外は欠席不可なんだとよ」
「しかも男子はパートナーがいなきゃ入場できないんだよねー」

 けらけらと楽しそうなとレティシアの言葉に、全員が納得した。
 相変わらず蟻の巣に飴玉を落とした状態であるヴァンツァーが、そろそろ女性恐怖症になる日も近いかもしれない。

「そうすると、お前らはどうしたんだ?」
「俺は姉さんに頼んだし」
「元々女子はエスコート役がいなくてもOKだから」

 即行安全圏に逃げた、友達甲斐のない二人である。
 しかし元々お祭りや騒ぎが嫌いではない性格が多く、衣装についても面倒を見てくれるというジャスミンに甘えて、あっという間に全員参加が決定となってしまった。
 ドラキュラがどうの、ミイラがどうのと当日の仮装についてきゃあきゃあと楽しげに話す子供たちを見守っていたルウは、突然ぽんっと両手を打った。


「そうだ! どうせならみんな、元の年齢に戻ってみない?」
「「「「「「「は!?」」」」」」」


 今度こそ全員が目を剥いた。
 考えてみればこの場にいる全員が、非常識的な方法で年齢その他をごまかしているのだからとんでもない面子である。
 その中でも一番ギャップが激しいだろうケリーが、おそるおそる口を開いた。

「……おい天使、それは俺もなのか?」
「あ、ううん、キングは別。僕が言ってるのはエディたちのことだよ。――パーティーに子供の姿じゃ浮いちゃうだろうし、一夜限りの変身って仮装パーティーにはぴったりじゃない? 久しぶりにみんな元の姿に戻ってみようよ」

 いいことを思いついたとばかりにはしゃぐルウに、十八歳以下の子供たちは揃って顔を見合わせた。

「……いいのあれ?」
「……思いっきり規定違反じゃねえのか?」
「……ガイアも『世界さえ滅ぼさないなら見過ごします』って最近諦めてたからな……」

 思わず遠い目になったリィに、彼らは揃って合掌を捧げた。






「……ところでER研修で血塗れになった白衣使えると思う?」
「シェラ、ヒビキを頼むぞ」
「任せてください」
「え、あれ、総スルー?」

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