「えーと、生きてる?」
「…………何とかな……」
聖なる祭典には不釣合いな会話である。
まるで死人のような顔色をしている友人に、とりあえず用意しておいたドクターペッパーを渡してみるとためらいもなく一気に飲み干した。街一面を甘い香りと花の匂いが漂っているこのお祭りは、金色天使には拷問に近いイベントらしい。
「だから、無理して来なくても良かったのに」
「……ここのイルミネーションを見たいって言ってたじゃないか」
「リィの健康の方が大切でしょ」
口を尖らせて言うと、リィはふっと目元を綻ばせた。
ちなみに気付け薬と化しているドクターペッパーは、既に三本目だ。手持ちの瓶が無くなったら即連れて帰ろうと思いながら、は手提げ袋から包みを取り出した。
「はい、ハッピーバレンタイン、リィ」
「ありがとう」
可愛らしくリボンのかかった箱に鼻を近づけて、リィは首を傾げてみせた。
「これ、甘い匂いがしないな?」
「糖分ゼロを追求したら吐き気を催すほど苦くなっちゃったので、一日一個以上の服用はお控えください」
「服用って……」
彼女らしい言い方に苦笑いをしたリィは、はたと気が付いた。
「手作りなのか、これ?」
「……いや、だって、甘味ゼロのチョコなんかどこにも売ってないし、一応シェラに教えてもらったからぎりぎり人間の食べ物だろうけどお菓子なんて作ったことないから味も形も保障できないし――やっぱ帰して!」
「駄目。もう俺のだよ」
先程までの疲労はどこへやら、奪い取ろうと伸ばしてくる手をひらりひらりと避けながら、リィは大切そうにチョコレートを仕舞う。
「じゃ、これは俺から」
「わっ……」
取り出したのは、白と薄紅でできた可愛らしい花束。
何でも器用にこなす相棒に教わって、かなり紆余曲折を経てようやく及第点になった花束は、思ったとおりによく似合う。
「ハッピーバレンタイン、」
「ありがとうリィ。すごく嬉しい」
――この笑顔のためなら、どんな苦労も報われる。
ペチュニアの花言葉:【あなたと一緒なら心が和らぐ】
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